「そういえば、ここら辺に花が咲いてる場所ってありませんかねー?」

ボクが唐突に発した問いに、鷹斗くんも撫子くんも目を丸くした。もうちょっと文脈を読めばよかったかなと思ったものの、言ってしまったものは時すでに遅しというやつで。

「珍しいね、レインが外出したがるなんて」

「小さな花なら近所でも咲いていたりするけれど、改めて花が欲しいって、どうしたの?」

「あー……」

ボクはぽりぽりと後ろ頭をかく。もうこの三人で暮らしてから長い。今さら気後れするることも遠慮することもない、か。

「そろそろ、妹の……命日、なのでー」

二人が息をのんだ。ボクはひらひらと両手を振る。あまり大げさには考えてほしくなかった。ボクにとって大事な日であることはたしかだが、変な気まずさを感じさせるのは本意ではない。

「お墓は本国ですからあくまで形だけなんですけどねー。やっぱり、何もしないではいられなくて」

「それは、そうよ」

「そうだね」

神妙に頷いた二人は顔を見合わせる。なにやら通じあった様子で頷き合うと、ボクの方を真摯な瞳で見つめた。

「俺は外に出る機会も多いし、それとなくいろんな人に訊いてみるよ」

「レイン、あと何日なの?」

……大ごとになりかけている、気がする。まあこの二人にかかれば何でも大ごとだ。それでいいか。

「そうですね……あと、一週間です」

そして長いようで短い日々が過ぎ、さすが鷹斗くんというべきか、一週間後、ボクは見渡す限りの花畑に佇んでいた。なんという花だったか、淡い色が風に揺れるのが幻想的で美しい。あの子がここにいたら嬉しそうに声を上げて、花冠を作ったりするのだろうか。

「レイチェル……」

しゃがんで、花を数輪摘み取る。立ち上がって、赤と青の入り混じった空に掲げた。けれど祈る言葉なんて持ち合わせがない。【かみさま】なんて、ただ運命のサイコロを弄ぶだけの存在なのだから。

(いつも、なんて言ってたんだっけ)