「手紙」「残像」「花束」

さっきまでCZやってた(原稿はどうした)詠のアンテナにびびびっときてしまいました。ゴメンネ。

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それは、あの壊れた世界から元の世界へと意識が戻ってきた、その次の日のこと。目を覚まして、そこが有心会でも隠れ家の廃墟でもないことにほんの少しだけ戸惑って、小さくてちぐはぐな感じのする身体を横に倒すと、枕元に小さなしおれかけの花束が置かれていた。

――こんなことができるのは、【あの理一郎】しかいない。自分の決断とはいえ、あちらに置いてきた彼のことを思うと胸が痛んだ。

「私は、大丈夫。ちゃんと、この世界で生きるから……」

花束を抱きしめて、記憶の中の彼に、届かないけれど届くように、願って呟く。けれどその間にも、どんどんその姿は薄れていって、思わず涙がこぼれた。

中学生に上がって少ししたくらいの頃から、理一郎は前髪をつくり始めた。あのおでこも可愛かったのに、と言ったらむくれてしまったけれど、なんだか寂しい気持ちがしたものだ。

ある日、すっかり前髪の伸びた理一郎の顔を見ながら話をしていたら、ふと、誰かの残像がよぎった。それを追いかけようとしたらズキリと胸がひどく痛んだので、私は言葉を途切れさせてしまう。

「撫子?」

「……なんでもないわ」

「そういう顔には見えないけど」

最近理一郎は前よりも素直に私を心配してくれるようになった。その顔を見たら胸の痛みはあっという間に消え去ってしまう。

「本当になんでもないわ。もうなんだったのかわからないもの。……でも、そうね」

「なんだよ」

「やっぱりその前髪、しっくりこないわ」

「……うるさい」

2020年、22歳の誕生日。自分の部屋で目を覚ますと、枕元にやけによれよれの手紙が置いてあった。