situation 1.

未だ瓦礫の多く残る道を、彼女と二人で歩く。ずいぶん郊外まで逃げてきたものだと改めて思う。政府にいた頃はかなり広い範囲を整備したと思っていたが、案外日本という国は広いらしい。

そんなことをぼんやり考えているたせいで歩みが遅くなっていたのか、いつの間にか彼女がボクの斜め前を歩いている。

「撫子くん」

「なあに?」

呼べば振り返ってくれる、その距離感が愛おしい。

「なんでもないですよー」

「なによ、レインってば……きゃっ」

笑った彼女が瓦礫に躓いてよろける。ボクはとっさに彼女を抱き寄せた。

「大丈夫、ですかー?」

「え、ええ……。レインって、意外と力あったのね……」

「あはは、さすがにボクも男ですからねー?」

「それもそうね」

くすりと彼女は笑って、穏やかな時間は過ぎていく。

situation 2.

鷹斗くんと散歩に出かけると言って家を出たはずの彼女が戻ってきたのを見て、ボクは目を瞬かせる。

「おやー? どうしたんですか?」

「日差しが強かったから帽子をかぶろうと思って」

玄関先に置いてある帽子をとった彼女に近寄って、その手首をそっとつかむ。

「レイン?」