舎密防衛本部、戦技訓練場。元素術の訓練全般を行う訓練場に、今回は五人の志献官が集まっていた。三つ編みを揺らして|舎利弗《とどろき》|玖苑《くおん》が手を打ち鳴らす。
「揃ったね。せっかくだから点呼でもとろうか」
横一列に並んでいる四人の部下を見て目を細め、玖苑はひとりずつ名前を呼ぶことにしたらしい。
「|宇緑《うろく》|四季《しき》|純弐位《じゅんにい》」 「……はい」
四季は若草色の髪を鬱陶しそうにかき上げながら気だるげに返事をする。玖苑は特に気にした様子もなく次の志献官に視線を移した。
「|浮石《うきいし》|三宙《みそら》純弐位」 「ちーっす」
軽い返答をした三宙だが、サングラスの奥の赤い瞳はやる気に満ち溢れている。玖苑もそれを知っているから責めたりはしない。その隣の志献官がすごい顔をしているが。
「|源《みなもと》|朔《さく》純弐位」 「はい」 「うん、いい子だね」
朔はぴしりと背を伸ばし、水色の瞳をまっすぐ玖苑に向けて敬礼を返した。玖苑も答礼しながら頷く。
「それから、|安酸《やすかた》|栄都《えいと》|純参位《じゅんさんみ》」 「はーい!」
勢いよく手を挙げて返事をする様子は子供のようで、火色の髪を揺らしてにこにこと笑う栄都はこれが素だから可愛いというものだ。
「よし、全員ちゃんと訓練に来て偉いね」 「舎利弗さんは遅刻常習犯ですからね」 「それでも完璧なのがボクだよ!」
四季がため息を吐いたのは完全に無視して、玖苑は設備課の職員に合図をする。
「これから行う訓練はざっくり言うとこの四人での的当てだ。それぞれ自分の元素術を駆使してなるべく多く得点を稼ぐように」 「了解」
四人の声が揃う。それじゃあ始めよう、と玖苑は一歩下がった。
◆
最初に用意されたのは、様々な距離に設置された「動かない的」だった。
「構え!」
玖苑の号令で、それぞれ武器を構える。四季は両手の二丁拳銃、三宙は大振りな電気銃、朔は襟元から取り出したピン、栄都は元素術で炎を纏わせた弓矢。
「始め!」