「坊ちゃん、お嬢様、いってらっしゃいませ」

「いってきます」

「……撫子、行くぞ」

今日も理一郎と学校へ通う。最近の理一郎は校門前に私を置いていくことも少なくなって、一緒に教室まで行くことがほどんどだ。

「おはよう、撫子、理一郎」

「おはよう、鷹斗」

「おはよう」

教室に入れば、鷹斗が笑顔で私達を出迎えてくれる。そのまま他愛ない話をしているうちに、チャイムが鳴った。

放課後、私は少し早足で談話室に向かう。ぼんやりしていたら、いつの間にか理一郎も鷹斗もいなくなっていた。

「……声をかけてくれたっていいのに」

いや、声をかけられても気付かなかったのかもしれない。そんなことを頭の片隅で考えながら、でも心は踊っていた。

「あ、撫子ちゃん。やっほー!」

「央。みんなも」

談話室に入ると、今日もCZメンバーが集まってわいわいと騒がしくしていた。なんの約束も拘束もない集まりだけれど、みんな自然と集まっているしトラもなんだかんだ引っ張り出されてくることが多い。今日も不機嫌そうな顔で机に片肘をついていた。

「……であるからして、かくれんぼというものは全身全霊をかけて行う真剣勝負なのである!」

「何言ってんのかさっぱりわかんねーよ。てか、かくれんぼなんてガキのすることだろ」

「いやいやトラくん。かくれんぼはただの遊びじゃないんだよ! 息をひそめて鬼から逃れる……そう、まるでスパイのようにね。かくれんぼはそう、秘密のミッションなのさ!」

「そうですトラさん。ぼくもかくれんぼなどただのお遊びにしかすぎないと思いますが央がこう言っているのでかくれんぼは重要なミッションなのです」

「お前ら、なんでそんなにかくれんぼで熱く語れるんだよ……」

いつもの斜め上の会話。それをぼんやりと眺めていたら、鷹斗がいつの間にか私の隣に座っていた。