「ねえ、レイン」

「はいー?」

私が10年後の世界に連れてこられてから数日。もう頭や体の重さはすっかり取れている気がするけれど、いまだにレインは毎日診察に訪れる。

今日の分の診察が終わり、なにやら複雑な機械を片付けるレインに声をかけるのも、毎日のことだった。

「あのウサギって、結局通信機だったのよね?」

「そうですよー。ボクがこう、専用の機械をつけて電話のように対応していたわけですねー」

レインはヘッドホンを頭に装着するような仕草をする。実際に見たわけではないけれど、きっとマイクつきのヘッドホンのようなものを使っていたのだろう。

「でも、見たり感じたりもしていたわよね?」

いつだったか、レインを投げた時に「痛いですよー」と言っていたのを思い出す。驚いたとはいえちょっと悪いことをしたなと思ったものだ。

「ああ、視覚情報も表示される仕掛けになってたんですよー。ハイテクでしょう?」

「そうね……」

どうやら私の知っているものより、ここの技術は進んでいるらしい。来たばかりの頃にそういう説明もされたけれど、今の話で実感がわいた。

ここは、科学技術の進んだ、未来の世界なのだと。

「…………」

「おやおやー、なにか考え込んじゃいましたねー?」

「自分の知ってる通信機と違って驚いてるんじゃねーの?」

「ははあ、なるほど」

耳にカエル君とレインの話し声が流れ込んでくる。ふと、レインとの会話を思い出した。思考が暗い方に転がっていかないように、つとめて明るく口を開く。

「レイン」

「はいはーい?」