「こんなめちゃくちゃな設計図で回路が組めると思ってるから研究者っていうのは好きじゃありません。なんなんですかこれは」

肩をいからせて研究室に乗り込んだビショップの第一声に、ミニッツの長、ルークはぱちくりと目を瞬かせた。

「どうしたんですかいきなりー。かなりお怒りモードですねー?」

「怒りたくもなります。思いついたまま描いたのが丸わかりなんですよ、これ」

ビショップは手にしていたやけに大きな紙――問題の設計図だ――を作業中なのもお構いなしにルークの机の上に広げる。ルークは苦笑してそれを覗き込んだ。

「ははー、まあたしかに多少ぶっ飛んでるところはありますねー」

「多少どころじゃありません、こんなのを素直に作ろうとしたらあちこちに余計な磁場が発生してノイズだらけになりますよ」

「でもわりと読み取りはしやすいように描いてあるでしょー? キミならちょちょいと配線を整理してくれるんじゃないかと思ってOK出したんですよー」

「やっぱり先輩のチェック入ってたんですか……。こんなの製作部に回すとか鬼畜ですか、あなたは」

「あはは、すみませんねー?」

「こっちは小難しい原理とかよく分からないんですから配線の整理をしようにも設計図と配置を変えるのにいちいち戦々恐々なんですよ。もっとしっかりしてください」

「はいはい、わかりましたわかりました。これは作り直しますから」

「お願いしますよ、まったく……」

ビショップはため息をついて、改めて設計図をルークに渡す。そのまま退室しようとしたところに、声をかけられた。

「吹っ切れた、みたいですねー?」

ビショップは扉の前で立ち止まり、ゆっくりと振り返る。

「……刺青の方法、ありがとうございました」

「いいえー。お役に立てたなら何よりです」

「ぼくはここで、駒として生きることを決めました。あれもこれも、仕事だと割り切ることにしました。ぼくはあなたと違って、与えられた仕事を適当にするような精神は持ち合わせがないので」

「ひどいですねー?」