舎密防衛本部に侵入し、モルたちを脅かす(?)三毛猫。そこに出くわした純弐位の反応は……!?


結倭ノ国を守る選ばれた人間、志献官たちの集う舎密防衛本部。しかしそこにも、弱点がひとつあった。それは、猫である。

因子をもった人間を志献官にする、賦活処置という処置は、ほかにも米の品質をよくしたり、モルモットに知能を与えたりする。「モル」と呼ばれる賢いモルモットたちが、舎密防衛本部の事務作業を一手に担っていた。 そう。モルモットに猫は大敵なのだ。

「たすけてモルー!!!!」

舎密防衛本部の正面玄関。モル公の悲鳴が響いて、まず駆け付けたのは源朔だった。モル公は、やっとまともに運べるようになった書類をばらばらに落としていて、それはひどいありさまだ。

「どうしたモル公。転んで書類を落としてしまったなら、俺も拾うのを手伝って――」

「そうじゃないモル!」

モル公は、その目にうるうると涙を溜めて、廊下を指し示す。

「猫がいたモルゥ……」

「猫だと!?」

朔は犬派か猫派かでいうと犬派だし、それ以前にモル派である。侵入した猫に、モルたちをひっかかれてはたまらない。モル公がみなまで言う前に、任せろ、と廊下を駆けだした。

――廊下は、走ってはいけません。

◇

朔がその猫を見つけたのは、戦技訓練場へ向かう渡り廊下だった。息を荒くした朔が追いつくと、丸く肥えた三毛猫は驚いたように振り返り、逃げようとする。

「待て!」

思った以上に素早い三毛猫だが、朔だって負けてはいない。後ろから手を伸ばすと長い跳躍で避けられるし、前に回り込むと急カーブで引き返された。

追い回して伸ばした手を、思いっきり引っかかれて、朔は反射的に手を払った。

「痛っ!」

にゃ、と一声鳴いて、猫は渡り廊下の奥へ走っていく。朔は足を止めてしまっていたことに気付き、猫を見失わないように、また走り始めた。