しとしとと、雨が降る。鷹斗くんはどこへ行くと言っていたんだったか、まだ帰ってきていない。撫子くんは窓の外を見つめて物思いにふけっているようだった。

彼女と一緒に留守番をしているボクはといえば、そんな彼女の憂いを帯びた表情もまた愛おしい、などと考えていたりして――我ながらバカみたいだな、と思う。

いつまでもこうしていたいような気もするけれど、さすがに彼女がぼんやりしすぎている気がする。ボクはゆっくりと近付いて、彼女の隣に立ち止まった。

「雨、ですねー」

「ええ、そうね」

返ってきた返事はやはりどこか上の空で。ボクははて、と首を傾げる。いったいどうしたのだろうか。

「鷹斗くんが心配ですかー? 雨に濡れてないといいですがー」

「そうね、タオルを用意しておいたほうがいいかもしれないわ」

「そうですねー」

「…………」

また、黙りこむ彼女。ボクはどうもこういう人間の機微にはうといというか、学ぶことを忘れてきてしまったきらいがあるので、いまいちどうすればいいのかわからない。

ボクが頭を悩ませていると、彼女はぽつりと口を開いた。

「ねえ、レイン」

「はいー?」

「ここで暮らすのは、窮屈じゃない?」

唐突な質問にボクは目を瞬かせる。彼女はそんなボクを見て我に返ったのか頬を赤く染めた。

「私達と一緒に生きたいって思ってくれたのはとても嬉しいの。だから一緒にいたくないって意味じゃなくて、その」

ぽかんとするボクを置いて、彼女は早口でまくしたてる。

「もし、鷹斗のことを好きな女の人と鷹斗が話しているのを見たら、私だったら複雑な気持ちになるから、だから、レインもそんな風に思っていたら気まずいんじゃないかと、思って……」

尻すぼみになった彼女の言葉を分析するに、つまり、先日のボクの告白について、彼女なりに考えてくれていたらしい。ボクはなんだかおかしくなって、声を上げて笑ってしまった。