舎密防衛本部、臨海演習場。広い演習場に大きな骨組みがいくつか組み上がっているのを見て、四人の純の志献官はおお、とそれぞれ感嘆の声を漏らした。

「なんだいこれ?」 「今日の訓練では少し趣向を変えたいと施設課の職員に持ちかけたら用意してくれたんだ。ご覧の通り」 「はぁ~よくやるねぇ。おじさんもこんな大がかりなのあんま見たことないよ」 「……大きい……」

早速やるぞ、と|鐵《くろがね》|仁武《じん》司令代理が振り返って手を叩く。あとの三人はそれに向かい合うように整列した。

「今日の訓練は|清硫《せいりゅう》|十六夜《いざよい》|純壱位《じゅんいちい》、|舎利弗《とどろき》|玖苑《くおん》純壱位、|凍硝《とうしょう》|七瀬《ななせ》|純参位《じゅんさんみ》の三名で行う。障害物を避けながら標的を見つけ、破壊して内蔵されている番号札を持ち帰ってくるように」 「了解」

三人の声が揃う。よし、と仁武は脇に移動した。

「――始め!」

最初に駆け出したのは小柄な志献官、七瀬だった。間を開けずに金髪をなびかせて玖苑が続く。十六夜は傷痕のあるあごをざらりと撫でて歩き出す。

「ッ!」 「はっ!」

進行方向にこれ見よがしに置いてあった標的を七瀬の鎖鎌と玖苑の鞭が同時にふたつ破壊する。番号札を拾った七瀬がちらりと玖苑を見た。玖苑もへえ、と呟く。

「ん? なんかあった?」

|縄鏢《じょうひょう》を一振りしてもうひとつの標的を壊した十六夜が訪ねると、ふたりの視線が番号札を見るように促す。十六夜が首を傾げて番号札を拾うと、十六の文字が見えた。

「十六番だけど?」 「ぼくが拾ったのは七番です」 「ボクは九番だよ。にくい演出だね」 「は~ん、面白いじゃないの」

最初に手に入れるのが自分の名前にゆかりのある番号になっているとは、凝った演出である。  それぞれ懐に番号札をしまう。七瀬がまた勢いよく駆け出した。

七瀬は進行方向左手前の骨組みへ入っていったが、玖苑と十六夜はひとまず全部で四つあるらしい障害物の全体を把握することにした。

「七瀬くんが入っていったのは壁登りのようだね」 「七瀬ちゃんなら身軽だし、ちょうどいいかもね~」

さっき破壊した標的のあたりを超えて、進行方向右手前の骨組みを覗き込んだ十六夜がげ、とうめき声を上げた。

「これあれだ、狭い隙間をくぐったりとかするやつ」 「七瀬くんにだいぶ有利な感じだね」 「奥のが俺らに有利なことを祈るよ……」

小走りで奥の障害物へ向かったふたりは、玖苑が左側、十六夜が右側を確認する。